知ってる人にはおなじみの話ですが、Googleって世界最大の広告代理店なのです。そして収益のほとんどを広告収入が占めてます。
上記、2013決算によると全収益(550億ドル!*1 )に占める広告収入の割合が91%。ちなみに2004-2007は99%だったので、これでもかなり改善されたほう。残り9%にAndroidとかGoogle Compute Engineとかそういうのが入っています。そもそも決算用セグメントがAdwardsとAdsenseとその他って分類だから。財務的にみればまさに広告屋なのは間違いない。
さて、SONY。SONYは今や金融屋と呼ばれています。
2013の決算によると営業利益の642%を金融が稼いでます。642%。間違いじゃないです。要するに金融が稼いだ利益を他の部門が食いつぶしてる。金融が1700億、映画と音楽で各500億稼いで、その他はほとんどマイナス。残るのが265億。
この状態を揶揄して金融屋などと呼ばれています。
GoogleとSONYの違い
GoogleもSONYもメイン収入源は「本業」のイメージとは違うところにある。しかし片やGoogleのイメージは素晴らしいテクノロジー企業、SONYのイメージは凋落した家電屋。Googleを広告屋と蔑む人は少ないが、SONYを金融屋と蔑む人は多い。なぜなのか。
SONYは過去エレクトロニクスで稼いでた成功体験も大きいのだと思う。しかし、やはり一番は稼いだ金で「本当にやりたかったこと」を実現してるかどうかだろう。
Googleのあらゆるものを検索可能にするというミッションは、Google検索でもAndroidでもGlassのような新しいテクノロジーでも、一貫して遺憾なく発揮されている。Googleのミッションが世界をいい方向に変えている、という説に賛同する人も多いはずだ。
以下の投資家向けFAQ、もちろん投資家向けなので、Googleがいかに金を稼げるかがこれでもかとばかりに記載されているのだが、こんなところでもやはり一番上にはミッションが記載されている。
一方のSONYはどうか。
そもそも経営方針をみても現状を改善したいのはわかるが、本来的になにがやりたいのかよくわからない。スローガンはどうなった?make.believeがまだスローガンなのか?この会社は人々を、世界を、未来をどうしたいのかがみえてこない。
そして、リリースされるのは価格競争/コストカットのあおりを受けた質の低下を伴ったつまらない製品*2。
Googleをみればわかるように「本業」と違うところで金を稼いでることで揶揄されるのではない。「本業」の本質を見失っているから揶揄されるのだ。SONYにはとりあえず「金融」「映画」「音楽」「その他イノベーティブ」とセグメント分けするくらいの豪胆さがほしい。Googleを見習って「事業活動とは人々を幸せにしつつ、そこから利益を生み出すこともしなければならない」という固定観念を捨てるべきなのだろう。
真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設。
良い文章だ。元々とんがった最高のものだけをつくろうという理念だったはずだ。グローバル大量生産薄利多売なんかは金を得るための手段だったはずだ。いま、金はあるんだからもう一度理念を見直すべきではなかろうか*3。
ほとんどの企業は理念や信念を実現するために設立されるが、当座の資金調達や企業の存続を優先してそれらを見失いがちだ。本当は、譲れない、かなえたい理念と収入源を一緒にしちゃいけないんだと思う。でも、本業と関係がないところで収入源が見つかるなんてラッキーなことはあんまりない*4。
GoogleもSONYも、そのラッキーな状態にあるんだから、Googleは広告屋、SONYは金融屋でいいじゃないか。イノベーションには金がかかる。高尚な理想の実現にも金がかかる。当たったからといって、昔みたいに素晴らしい発明が全ての人々に均質に恩恵を与える時代でもない。そんな昨今で、悪いことをせずにお金を稼げるならいいじゃないか*5。
そうして稼いだあぶく銭でぜひわたしの生活に潤いを与えてくれ!ニッチで採算性が悪くて、でも劇的に生活を変えるような、わくわくするようなキレキレのものをまた作ってくれ。
わたしには返せるものはなにもないけれども、素晴らしい製品やサービスによって受けた恩恵や感情や潤い、すなわちUXを残らずこのブログで大公開する用意はあるぜよ?!頼んだからな!*6