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フルフロンタルは絵に描いたような"優秀な老害"である

 

機動戦士ガンダム ユニコーン episode 2  赤い彗星 映画パンフレット

ガンダムUC ep7まで見たのですが、フルフロンタル大佐が、自分がずっと感じていた"優秀な老害"という概念そのものだったので、それについて書いてみようと思う。

ep7含め若干のネタバレ有りますので未視聴の方はご注意。

 

 優秀な点

彼が優秀・有能な事については全く疑いようがないだろう。現役バリバリ、作中最強クラスの類稀なる戦闘力、迅速かつ適切な判断力、ブレがない行動、度胸、戦闘から交渉まであらゆる面をカバーするオールマイティ性、カリスマ性、それに伴う人望、部下の信頼、etc、etc...

総合的な能力で見れば、作中最も優秀であると言っても過言ではあるまい。

この点、前線に出るどころか近年の状況さえ理解できないのに、過去の栄光を笠にきて重要ポジションに居座り、思い込みと思いつきで命令を下し現場に混乱をきたす、といった従来のステレオタイプな老害とは全く類似性がない。

 

老害な点

自ら主体的に目的を定め、未来を切り拓くことを放棄している点。自分を「器であると定義している」とは、まさに思考停止を象徴するような発言である。*1

現状維持、負けないこと、今まで通りやることを意図し、大局的な目的を見失っている。ラプラスの箱に対する対処案はその象徴であり、ミネバにその点を見抜かれ痛烈にdisられる場面は印象深い。

他方、旧来の老害との違いは、このスタンスこそがある種の秩序・希望を生み出しているという側面があることだ。袖付きは彼がいなければ、彼の優秀さなくしては組織体を維持することはできないだろうし、そうなった場合スペースノイドの願いや怨みは報われずただ鬱屈するのみである。彼が存在することそのものが「今」の希望であり、害どころか益を生み出しているとさえ言える。

 

一般的に定義すれば、"優秀な老害"とは、その優秀さゆえに劣勢を覆し、局所的・短期的な益をもたらすことで、結果として未来への進歩・全体最適を阻害するような存在であるといえよう。

手段が目的を失い、手段そのものが目的化しているが、その手段を遂行するシステム・スキーム・人間が優秀でありすぎるため、捨てたり変えたり無視したりしにくくなっている状態。これが行き着く先は「ゆっくりとした死」でしかないが、優秀さがもたらす局所的な益が、正確な状況判断を阻害してしまう。

憎まれっ子世に憚る、といったところか。

 

特筆すべきは、ある種の正義を保持し手段の遂行に特化することで、本人たちですら自分の老害性に無自覚になってしまうことだ。

フロンタル大佐の話に戻せば、彼は仮にも組織の最高責任者であるミネバの、ある妥当性をもった未来へのビジョンを拒絶し「今まで通りの状況を優位に進める道」を選んだ。

もはや支離滅裂であるが、「地球連邦と戦うスペースノイド代表のネオジオン」というスキームの中で、それに飲まれて引き返せないところまできていたということなのかもしれない。

 

ステレオタイプな老害が、戦局的にいえば単なる排除されるべき駒でしかないのに対し、優秀な老害は駒として強さも意味もあり、とてもやっかいで警戒すべき存在だ。*2

それを、フルフロンタルはとてもよく体現している。そして「新しい時代を作るのは老人ではない」と若者を諭していたはずの本人(?)が、時の流れを経て若者の未来への提言を拒絶する側に回るという状況は、実に興味深く示唆に富んでいる。

*1:この全く衰えのみえない優秀さとは裏腹な主体性の無さが、作中では亡霊だとか魂のないコピーだとか、そんなふうに言われている

*2:そもそものところ、未来性があるという価値観だけで、「旧態依然としているが今現在に益を生み出してる存在」を"害"などと呼べるかどうかからして疑問がある