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UXエンジニアになりたい人のブログ

転職活動はじめてすぐやめた

Apple Watchの操作性設計に対する3つの疑問と1つの仮説

主張/考え デザイン/UX

Apple Watchの操作性について感じた違和感について書きます。

 

疑問1:iPodに先祖返りしなかった「まわしてポチ」UI

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Apple - Live - September 2014 Special Event

Apple Watchで最も操作性に影響を及ぼすと思われるのは、もちろんデジタルクラウンだろう。わたし、デジタルクラウンを最初にみたとき、竜頭の押し込みは「決定」かと思ったのです。下にあるボタンは「戻る」なのかと。

iPodのクリックホイールから脈々と受け継がれていた「まわしてポチ」でどこまででも階層をたどっていけて、「戻る」でどこまででも戻れるあのUI。複雑なことができる大きなタッチスクリーンに対して有用性が示せなくなっていたけれど、間違いなく直感的であったあのUIが、小さくてパーソナルな時計というプロダクトを得て復活か!とね。

iPod Obsession

iPod Obsession | Flickr - Photo Sharing!

 

だが、実際は違った。竜頭の押し込みは「ホームに戻る」らしい。

ホームに戻る?ということは、「決定」とか「選択」はボタンでできないということ?それらはタッチパネルでやるの?「ちっさい画面でピンチアウトさせるなんて馬鹿げてるぜ m9」とdisるけれども、ちっさい画面にタップするのは良いの?

 

そもそもどういう姿勢で操作を行う想定なのかどうもはっきりしない。ちょっと、Apple Watchを操作するところを想像してみてほしい。使うのは右手だろう。親指でタップして、人差し指でまわす?それとも、人差し指でタップとまわしの両方をする?

前者の場合、太い親指でタップ操作をすることで、視認性が犠牲になるのは明らかではないか。後者の場合、指がディスプレイと竜頭を行ったり来たりして操作が煩雑になるのは明らかではないか。

ボタンと竜頭のハードUIだけである程度の操作を指を動かさずに完結できるようにしなかったのはなぜなんだろうか*1

 

 

疑問2:謎の連絡先ボタン

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Apple - Live - September 2014 Special Event

さて、戻るボタンと誤認した竜頭下のボタンが何かといえば、「連絡先」ボタンらしい。

押すと(アドレス帳の?)連絡先が出てきて、相手の時計をたたいたり、絵を送ったり、心拍数をビジュアライズして見せたりできるらしい。

え?いやちょっとまって、いやいやいやそれさ、たしかに面白いけども、そんな重要か?たった一つのボタンに割り当てるような機能か?心拍を送るって何だ?プレイに使うのか?

 

疑問3:通知用ディスプレイvs作業遂行用ディスプレイ

https://www.apple.com/watch/technology/images/hero_large.jpg

Apple - Apple Watch - テクノロジー

デジタルクラウンでMapを拡大する図が象徴的に用いられているが、そもそもなんのためにMapを拡大するのか。あれはいったいどういうシチュエーションなのか。あんな小さい画面で拡大しようが縮小しようが結局どうにもならなくないか?

 

すこし、Android Wearの話をする。Android Wearは「通知」がアーキテクチャの根幹にある。初期の頃は「Androidディスプレイのサブディスプレイ」というコンセプトを打ち出していたように記憶している。

http://developer.android.com/wear/images/screens/stream.gif

Android Wear | Android Developers

現在のSuggest機能の図がこれだ。

縦に通知(Suggest)が並んで、縦フリックでそれらを選ぶ。横フリックで選んだものに対する操作を選ぶ。必要に応じてメインディスプレイ(androidスマートフォン)に処理が引き継がれる。操作体系はシンプルで一貫しているように見える。

 

それに対してApple Watchはもっといろんなことをやらせようとしているように見える。だからこそデジタルクラウンのような新しい操作体系が必要なのだと思う。

が、しかし疑問1で呈したようにそのクラウンだけでは操作を完結できない。また、Android Wearをみても、まわすだけでなく、もうワンクッション、横フリックに相当する機能が必要なはずだが、それに相当するハードキーもない。クラウン自体、スクロールとズームの機能を併せ持つという曖昧さも気になる。

 

そして、AppleもすべてをWatchで完結しようとしている訳ではない。すでにWatchの内容をシームレスにiOSデバイスに引き継げることを示唆している。 

https://www.apple.com/watch/features/images/handoff_mail_large.jpg

Apple - Apple Watch - 特長

 

つまり、通知専用に振り切ってるわけでもなく、独立して操作を行う方向に振り切ってるわけでもない。どっちつかずという言葉が最もふさわしい。いったいどうなっているのだろうか。

 

仮説:Appleは“知っている”のかもしれない

一つあるとすれば、Appleは既にユーザビリティテストなりなんなりで、デジタルクラウンこそが大事、と“知っている”可能性があると思う。

通知がきて、「なにかを決める」前に「くるっとまわす」操作だけが必要かつ重要であると、“知っている”。チラッとみて、くるっとまわして、ワンタップ。それで全てがうまく行くことを“知っている”。そこから“潜る”ことがないことも知っているから、デジタルクラウンは「まわす」と「最初に戻る」しかない。

“知っている”というより“できている”というほうが正しいか。クラウンに最適化したUIがすでに作成されてるのだろうと思う。普通に考えるとAndroid Wear的になってしまうため、どういうUIになるのか想像もつかないが、きっと魔法のようなUIになっているのだろう。

 

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Apple - Live - September 2014 Special Event

同様に、Appleは連絡先、すなわちコミュニケーションがパーソナルデバイスの鍵になることを“知っている”のかもしれない。

少なくとも鍵に“しようとしている”のは間違いない。上記はライブイベントのキャプチャだが、コミュニケーションは3つの軸の1つだ(残り2つは時計と健康管理)。

Yoというアプリがあった。知り合いからYoというメッセージがくるだけのアプリ。

あれと同じように、腕時計が「トントン」とノックされ、そこをみると相手の顔が現れてる。同じように「トントン」し返すと、相手にもその感覚が伝わる。返事はトントンではなく、トントトンなのかもしれない。アイシテルのサインかもしれない。文字で書くとなにが楽しいか全くわからないが、しかしなにか楽しそうであることは想像に難くない。

こういう制約が生み出す楽しさみたいなの、スタンプによるコミュニケーションの楽しさを知っているわたしたちにはなじみ深いのではいだろうか*2

このようなコミュニケーションの重要性が鍵になると“知っている”からこそ、独立したハードウェアボタンを割り当てたのではないか、と。

 

保険

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Apple - Live - September 2014 Special Event

一方で、保険と思われるものもある。タッチとプレスの正確な違いを判断できるというあの技術。

伝統的なカシオのデジタルウオッチなどは、ボタンが3つくらいついていて、複数のボタンを同時に押すことで(たいていは時計を「挟む」ような組み合わせ)で特別な「モード」に入る。ディスプレイのプレスとハードボタンの押下の組み合わせで、同じようなことはできるだろうし、これによってかなり複雑な操作もできるようになるだろう。

この技術で、人々が「チラッとみてくるっとまわす」以上のUXを要求した際にうまく立ち回れるようにするつもりなのだろう*3

 

Siriも保険にカテゴライズされてるように見える。"OK, Google"に対してSiriをあまりプッシュしていないのは、音声入力による複雑な操作は魔法のクラウンUIによって不要になると今は踏んでいるからなのだ、というロジック。

 

前述したように、AppleもWatchで受けた通知をiOSデバイス(Macにも?)引き継げる機能を検討しているようだ。だから、人々がAndroid Wearのような通知特化ディスプレイのみを欲する状況になったとしても戦える。

こっちに振れた場合、結局デバイスの(デザインや質感等含めた)質勝負になるだろうが、その辺はお手の物であろう。

 

まとめ

おそらくAppleは「見えて」いるんだと思う。スマートウオッチに求められるUXはおおむね「通知プラスα」でカバーできて、そこではクラウン的操作とそれに特化したUIが差別要素になって、スマートウオッチに求められる新規価値はコミュニケーションにしかないんだと。

リスクは、デバイス上で複雑な作業を要求されることと、単なる通知ディスプレイとしてしか使われないことで、これらは「保険」でなんとかできるだろうと。

 

しかし、どうも心配ではある。

「適当にやってる」感がどうも拭えない。エンジニア目線でみると、これから拡張・メンテしていくであろう新しいプラットフォームの、この一貫性のなさは異常だ。

まだ人々のUXが固まっていないように見えるこの時期に、「もう変えられない」デザインをプロダクトアイコンとして猛プッシュしている姿勢もどうも心配だ。

“賭けすぎてる”気がしてならない。

 

お前この間iPhone6の巨大化リスクとかいう記事書いて結果m9(^Д^)プギャーwwwだっただろAppleは天才なんだから黙っとけよ、というのはわかる。

時計はパーソナルプロダクトだからフラットデザインと同じくエンジニア目線で語るべきじゃない、というのもわかる。

それよりなにより、実際に使って生活の一部として体験してみるまでは正確な評価はできないというのも、わかる。

が、しかしやはりどうも気になるので、ここに記事として残しておくことにした。

 

参考:

 

おまけ

ほかの人の意見で気になったものなど。

Apple Watchはどこまで使える? | オリジナル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイトApple Watchはどこまで使える? | オリジナル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

このひとは、「Appleがいろいろなことをやらせる方」に振っていると解釈している。わたしも最初そう思った(Mapをデジタルクラウンで拡大縮小するというあの絵がミスリードなんだろうと思う)が、それだけだと操作体系上のつじつまが合わない。

 

Apple Watchの小さなパーツには、アップル最大の挑戦が込められているだろう : ギズモード・ジャパンApple Watchの小さなパーツには、アップル最大の挑戦が込められているだろう : ギズモード・ジャパン

デジタルクラウンとiPodホイールの類似性に着目している。操作体系の違いには踏み込んでいない。

 

*1:イメージとしてはPS Vitaとかタッチパネルコンデジみたいな。ハードボタンで基本操作ができて「ショートカットとして」タップがある、みたいな

*2:ていうかWatchKitがリリースされたら速攻スタンプアプリを出すべきじゃね?最後LINEに全部持ってかれる未来が見え見えだがw

*3:しかしこれがうまく作用するかは少々疑わしい。時計の表側と側面を同時に押すのって、結構やりづらいから